夜中の地震で考えた|作業療法士として患者さんと自分の生活をどう守るか

夜の入院病棟で患者さんと家族の安全を考える作業療法士 作業療法・リハビリ

夜中に大きな揺れを感じ、最初に思い浮かんだのは離れて暮らしている家族のことでした。

筆者
筆者

みんな無事かな…

夜中だったこともあり、すぐには状況が分からず、余計に不安になりました。

2026年8月23日午前2時ごろ、茨城県南部を震源とするマグニチュード5.9の地震が発生しました。

出典:気象庁「2026年8月23日2時ごろの茨城県南部の地震」

現在の勤務先はクリニックですが、以前は入院病棟で働いていました。

家族が無事とわかった後、以前働いていた入院病棟のことを思い浮かべました。

同じ医療機関でも、クリニックと、患者さんが24時間生活している入院病棟では、災害時に心配することが大きく異なります。

この記事では、夜中の地震をきっかけに思い出した病棟での経験と、医療職として患者さんを支えること、自分や家族の生活を守ることについて考えます。

病棟では、設備が一つ止まるだけでも大変だった

入院病棟では、患者さんが食事をし、トイレへ行き、入浴し、眠るという生活を続けています。

しかし、災害や設備の停止によって、普段なら当たり前にできていることが一つずつ難しくなります。

以前、エレベーターが止まったときには、患者さんの食事を職員がバケツリレーのようにつないで運んだことがありました。

入浴設備が使えなくなったときには、入浴の代わりに患者さんの身体を拭いて対応しました。

限られた時間の中で多くの患者さんに対応するため、病棟全体が慌ただしくなりました。

停電したときには、トイレの中も暗くなりました。

転倒する危険があるため、普段は一人でトイレへ行ける患者さんにも、ほぼ全員付き添う必要がありました。

食事を運ぶ。

身体を清潔に保つ。

トイレへ行く。

どれも普段は当たり前に行っていることです。

しかし、設備が一つ止まるだけで、多くの人手と時間が必要になります。

もし今も入院病棟で働いていたら

現在はクリニックで働いているため、地震のあとに職場について気になったのは、「棚や机から荷物が落ちていないだろうか」ということでした。

しかし、以前のように入院病棟で働いていたら、心配することはそれだけではなかったと思います。

患者さんは転んでいないだろうか。

突然の揺れでパニックになっている人はいないだろうか。

停電や設備の停止によって、普段通りの生活ができなくなっていないだろうか。

もし病院が震源に近く、大きな被害を受けていたら、患者さんの安全確認だけでなく、移動、食事、排泄など、さまざまな場面で人の手が必要になります。

対応しなければならないことが増える一方で、職員自身が被災したり、家族のもとへ戻らなければならなかったりして、出勤できる職員が少なくなる可能性もあります。

必要な人手は増えるのに、働ける職員は限られる。災害時の入院病棟では、そのような状況も起こり得るのだと思います。

もし今も病棟で働いていたら、私は患者さんのことを心配しながら、離れて暮らす家族の安否も気にしていたはずです。

職場に残れるかは、家族の状況によっても違う

私は独身で、一人で暮らしています。

離れて暮らす家族の無事を確認でき、自宅にも大きな被害がなければ、職場に残って患者さんの支援を続ける選択をしやすいと思います。

しかし、職員全員が同じ状況ではありません。

小さな子どもがいる人、介護が必要な家族と暮らしている人、自宅が被害を受けた人もいるかもしれません。

家族の安否が分からないまま、職場に残るべきか、自宅へ戻るべきか迷う人もいると思います。

医療職だからといって、家族の心配をせずに働けるわけではありません。

患者さんを支えることと、自分や家族の安全を守ること。

そのどちらも大切だからこそ、判断が難しくなるのだと思います。

筆者
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家族、友人、患者さん、同僚のスタッフ…

1つを選ぶのは難しい。

自分の生活も、どうなるか不安だし…

防災リュックを自宅に置くだけで十分なのか

入院病棟で働いていた頃から、自宅には防災リュックを用意していました。

しかし、当時は自宅よりも職場で過ごす時間のほうが長く、地震が起きたときに自宅にいるとは限りません。

大きな災害が勤務中に起きれば、すぐには帰宅せず、職場に残って患者さんの支援を続ける可能性もあります。

そう考えると、自宅に防災リュックを置いていても使えないのではないか、そもそも必要なのだろうかと思ったこともありました。

しかし、決して防災リュックが不要なのではなく、自宅だけに備えておけば十分なのかを考える必要があると思いました。

自宅にいるとき、勤務しているとき、通勤しているときでは、必要な備えも違います。

そこで、自宅とは別に、職場にも自分用の備えが必要だったのではないかと考えました。

病棟に残って患者さんの支援を続けるのであれば、飲み物や食料だけでなく、着替えや下着、洗面用品、充電器なども必要になります。

常備薬を使用している人は、その準備も必要です。

自宅の防災リュックとは別に、職場にも自分が数日間過ごすための物を少し置いておいた方がよかったのかもしれない。

今回の地震をきっかけに、そう思いました。

もちろん、職場に何を置けるかは、勤務先の備蓄や保管場所によって異なります。

まずは職場にある物を確認し、自分に足りない物を考えておくことが大切だと思います。

さらに、しばらく自宅へ帰れない場合に備え、家族との連絡方法や、職場に残る場合のことを話し合っておくことも、備えの一つだと思いました。

作業療法士として被災地を支援する方法もある

関東でも大きな揺れを感じた2011年の東日本大震災では、日本作業療法士協会が被災地で支援活動を行いました。

当時、宮城県などへの作業療法士の派遣ボランティアが募集されていたことを覚えています。

協会の記録によると、東日本大震災では作業療法士が被災地へ派遣され、被災した人の生活の回復に向けた支援に携わりました。日本作業療法士協会「復興のあゆみ」

現在は「災害支援活動人材バンク」という仕組みがあり、平時から登録や研修を行い、被災地などから派遣要請があった場合に、登録者へ参加意向が確認されます。

登録したからといって、災害が起きたらすぐに現地へ向かうわけではありません。被災地の要請を受け、協会が調整したうえで派遣される仕組みです。日本作業療法士協会「災害対策室」

被災地のために何かしたいと思っても、自分の仕事や生活、家族の状況によって参加できるかは変わります。

支援したい気持ちだけで現地へ向かうのではなく、必要とされている支援を知り、研修を受け、無理なく参加できる状態を整えておくことも大切なのだと思います。

最後に:支える側の生活も守られなければならない

地震が起きたとき、作業療法士として何ができるのかを考えました。

患者さんを支えることと、自分や家族の生活を守ることは、どちらか一方だけを選ぶものではありません。

支える側にも、心配な家族と守らなければならない生活があります。

だからこそ、災害が起きたときに誰が職場に残るのか、帰宅しなければならない職員がいる場合はどう対応するのかを、平時から確認しておく必要があります。

防災は、自宅に物をそろえることだけではありません。

家族との連絡方法、災害時の職場での役割、自分が職場に残れる条件、勤務中に必要になる物まで考えておく。

それも、医療職としての備えの一つなのかもしれません。

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